日本時間の6月10日、AMDはFinancial Analyst Dayを開催。ここではLisa Su CEOを始めとして主要なエグゼクティブが勢ぞろいし、それぞれ自分の担当分野について現在のビジネスの動向と合わせて、将来製品の説明を行なった。そこで今回は、そのCPU部分について説明しよう。その前にLisa Su CEOによる決算報告を紹介したい。
さらに一段高い目標を掲げた
AMDの長期財務モデル
最初に、今年3月3日に行なわれた決算の内容に簡単に触れておくと、売上は58億8700万ドルで、前四半期比で22%、昨年同期比で71%もの増収。営業利益は9億5100万ドルでおなじく25%/27%の増加になっており、申し分のない結果である。
ちなみにこれはGAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則)ベースの数字で、実際の状況ではNon-GAPPを使うことが多いが、こちらだと営業利益は18億3700万ドル、純利益は15億8900万ドルとさらに跳ね上がる。
しかもXilinxの買収が完了したことで、さらに今後の売上を大きくし、財務状況を改善させられる目途が立ったというのがSu CEOの説明である。この結果としてSu CEOが示した新しい長期財務モデルが下の画像だ。

無駄に経費を削減することで利益を伸ばすような真似はしない、と宣言したのも大きい。ちなみにPapermaster氏のプレゼンテーションでは、2017年には12億ドルだった研究開発費は2022年には40億ドルをこえ、エンジニアも2017年には7000人だったのが、2022年には16000人を超えている、という数字も示された
2020年のFinancial Analyst Dayの結果を連載553回で紹介しているが、その際の長期財務モデルが下の画像である。この時の記事にも書いたが、この時点ではなかなかチャレンジが必要な目標になっていた。
ところが今回は下記のようにさらに一段高い目標を掲げている。
- 成長率は20%台で変わらず
- 粗利益は50%以上→57%以上に
- 営業経費は言及なし→売上の23~24%の範囲に
- 営業利益率は20%台中盤→30%台中盤に
- フリーキャッシュフローマージンを15%→25%に
それだけ、AMDが勢いづいていることを裏付けるような目標が掲げられたのは、もちろんFinancial Analyst向けという側面はあるにせよ、不調のインテルと好対照ではある。

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