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「炭」をゴミでつくる。反エコロジストも心が動かされたSUMIXのエコ技術

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

「炭」は環境にいいって本当に?

 私は「自然」や「SDGs」という言葉に対し、どこか一歩引いてしまう側の人間だ。どうしても「意識高い系」という響きがつきまとい、少し苦手意識を持っている。

 自然への意識が高い人との会話でしばしばあがるのが「炭」の話だ。「炭は土壌改良や植物の生育促進に役立つ」という声も多いし、「空気中の二酸化炭素を固定化して環境改善に寄与する」という研究結果は確かにある(参考:農林水産省報告書「バイオ炭の農地施用をめぐる事情」)。一見すると良いことだらけに思えるが、炭を作る過程で草木を燃やす際に発生する大気汚染の問題を聞くと、「それじゃ意味がないじゃないか」と思わずツッコミを入れたくなる。

「ゴミから高品質な炭をつくる」SUMIXの衝撃

 そんな私でも、「面白い」と心を動かされたのが、株式会社ガイア環境技術研究所の「SUMIX」だ。これは各種有機性廃棄物、つまりゴミから高品質な炭を低コストで安定的に製造できるという装置だ。「ゴミから炭?」と思うかもしれないが、これがガチらしい。従来の炭化炉や、いわゆる「くん炭」と比べても品質が高い。それには理由がある。

還元滅菌炭化加工機「SUMIX」

従来の炭が抱えていた問題点

 通常の炭の場合、まず原材料となる木材や草木の種類によって含まれる成分にばらつきがあるため、土壌での効果が一定しないことがある。また、伝統的な炭化炉では燃焼温度や時間が均一でない場合が多く、炭の粒子構造や化学的性質に違いが生じやすい。そのうえ、不完全燃焼や不適切な燃焼環境による汚染物質の混入が、土壌への悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。

SUMIXが実現した“安定品質”の秘密

 一方で「SUMIX」はこれらの課題を解決するために設計されている。燃焼過程が精密に管理されており、生成される炭の品質は非常に安定しているという。この安定性が、畑での利用時にも高い効果を発揮する理由だ。

生ゴミから作られたSUMIX炭

炭だけじゃない! 次々登場するエコ装置

 さらにこの会社、ただ炭を作るだけではなく、「DRYDASH」という装置で野菜くずを肥料に変えたり、「ZETAWAVE」という技術で配管のスケールを抑えたりと、多岐にわたるエコ技術を手がけている。この多角的なアプローチに、つい「いいぞ、もっとやれ!」と応援したくなった次第である。

 炭を活用している事例は、近年の温室効果ガス削減や持続可能な農業を考える際に注目されている分野だ。それに加え、ゴミを再利用して環境負荷を減らすというアイデアには、心から拍手を送りたい。

環境意識×実用性の“ちょうどいいバランス”

 結果として「SUMIX」は、炭を作る過程でも大気汚染を最小限に抑えつつ、ゴミを有効活用するという点で、ただの「環境意識高い系」の話を超えた実用的な技術だと言える。まさに「意識が高いだけじゃない」現場の知恵が詰まった一品なのだ。これを読んで、「引退したら田舎で畑をやりたいな」と思っているあなたにこそ、一度チェックしていただきたいと思う次第である。

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