このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

ワークハッピーを目指す「Zoomユーザー会」レポート

AI・データ活用もはかどるクラウドPBX 「Zoom Phone」ユーザー4社が語るビフォー・アフター

2025年06月06日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

提供: ZVC JAPAN

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 「あの会社の工夫、ちょっと聞いてみよう」と題し、2025年5月15日、ZVC JAPAN(Zoom)がユーザー会を開催。今回は、2019年から国内提供を開始し、AI・データ活用のための機能拡充が続くクラウドPBX「Zoom Phone」のユーザー企業が集った。

Zoom Phoneユーザー限定イベントとして「大手町フィナンシャルシティ」で開催された

 同イベントでは、Zoom Phoneのユーザー企業4社が登壇。Zoom PhoneとAI機能の活用でどう業務や企業が変わったかが披露された。

 なお、イベントのモデレーターを務めたのは、ユーザー会のコミュニティリーダー第1号として任命された、SNSマーケティング支援を中心としたビジネス展開をするテテマーチのエヴァンジェリストである出口潤氏だ。Zoomの製品や思想を愛し、イベントへの登壇や情報発信を重ねてきた出口氏。もちろん、テテマーチとしても営業チームでZoom Phoneを活用中だ。

テテマーチ ソリューション事業本部 ゼネラルマネージャー エヴァンジェリスト 出口潤氏 任命記念に贈られたZoomのノベルティグッズを着用

電話が“情報を伝える道具”から“情報を蓄積する道具”に

 ユーザー企業を紹介する前に、Zoomの畠山勇哉氏によるZoom AIに関する最新機能を紹介したセッションをおさらいしよう。

ZVC JAPAN アカウントエグゼクティブ 畠山勇哉氏

 昨今の生成AIの波はZoomにも訪れており、現在、すべてのZoom製品に、AI機能「Zoom AI Companion」が実装されている。Zoom Phoneでは、会話の内容がすべて文字起こしされ、通話中であっても要約や質問をリアルタイムで依頼できる。

 この機能強化で、メモが必要な業務であっても、聞き逃しや記録のミスなどを防ぎ、対話に集中することが可能だ。通話の終了時にも、会話が自動で整理され、ToDoリストの作成や会話内容の共有を効率化することができる。

 これらの機能は、Zoomの有償版ユーザーであれば、追加コストなしで活用できる。「情報を伝える手段であった電話が、“情報を残す手段”となり、さらに“情報を資産として蓄積できる”ように進化している」と畠山氏。

対話の内容がリアルタイムで文字起こしされ、AI Companionが会話を要約している様子

 蓄積された情報をより活用したい顧客向けには、有償のアドオン製品として「Zoom Revenue Accelerator」を用意している。Zoom Phone・Zoom Meetingsと連携でき、会話(通話や会議)の内容を分析して、商談確度を高められる営業組織向けのサービスだ。

 会話分析の機能では、各参加者の発言量などが可視化され、クレームの発生など、何か問題が発生した際には、該当の箇所をすぐに聞き直すことができる。ここで、AI Companionに議事録を作成してもらったり、「顧客が製品にどれくらい関心を持ったか」などを尋ねたりすることも可能だ。

 コーチング機能では、事前に作成したチェック項目をもとに、会話を自動採点してくれる。チームメンバーが商談中、特定の単語にどれだけ言及しているかなどを、組織横断で把握することも可能だ。「社内のハイパフォーマーの使うワードなどを分析して、学習コンテンツとして活かすこともできる」(畠山氏)

チームメンバーを横断した分析

 他にも、SalesforceやHubSpotと連携し、会話の分析をCRMツールに自動で取り込めるなど、データを基に営業組織を強化するための機能が取り揃えられている。

Revenue Acceleratorの主な機能

FOLIOホールディングス:必要な通話だけが届く仕組みを構築、Terraformによる管理のコード化も

 ここからは、Zoom PhoneとRevenue Acceleratorを利用する4社のユーザー企業を紹介する。まずは、資産運用や金融機関向けのサービスを展開するFOLIOホールディングスの事例だ。

 オンプレミスPBXを利用していた同グループは、フルリモート化を機に、対外的なコミュニケーションを電話以外に誘導。また、代表番号宛の着信は、電話代行サービスを使用する体制へと切り替えた。

 しかし、一部の社員がプライベートの携帯で社外と連絡を取りだし、電話代行サービスでも迷惑電話を仕分ける手間が発生した。同グループの工藤智史氏は、「この課題解決のために行き着いたのがZoom Phone」だと語る。

FOLIOホールディングス 情報戦略部 工藤智史氏

 2024年、まずは事業会社の1社にて、オンプレミスPBXをZoom Phoneにリプレース。リモートワークでの通話問題を解決すると共に、代表番号宛の不要不急の電話は、Zoom Phoneの自動音声応答システム(IVR)で解決した。IVRの分岐を複雑にすることで、該当する電話は劇的に減少。基本は留守番電話で受け、各部署にはプッシュ通知と共に、Slackに転送される仕組みを構築した。「本当に必要な連絡だけが届くようになり、質も担保され、仕分けのコストも減った」と工藤氏。

 また、管理面ではIaC(Infrastructure as Code)ツールのTerraformを利用して、Zoom製品の設定管理をコード化している。「設定の漏れや事故がなくなり、誰がどう変更したかが記録として残るようになった」(工藤氏)

 今後は、マルチサイト機能を利用して、グループ全体へとZoom Phoneの活用を広げていく予定だ。

HNcommunications:文字起こしでクレーム対応を短縮、月110万円のコスト削減も達成

 続いては、営業代行サービスを手掛け、アウトバウンド通話に特化したコールセンターを運用するHNcommunicationsの事例だ。

 同グループの玉城守都氏は、Zoom Phoneとの出会いを、「ソフトフォンのコールシステムを使用していた中で、『かけ放題のプランもあってコストが下がるよ』と紹介されたのがきっかけ」と説明する。文字起こしもできることが決め手となり、まずは、グループ企業の「すまえる」への導入を進めた。

HNcommunications 事業本部長 玉城守都氏

 各事業所でバラバラだったソフトフォンを統合し、2~3か月を経て、稼働を開始。今では全アカウントでRevenue Acceleratorを活用しているという。運用面はソフトフォン時代から変わらないが、大きな成果を得られているのが「AIによる文字起こし」だ。

 これまでクレーム発生時には、事態を正確に把握できるよう、通話の録音をすべて聞き直していたという。今では、AIによる文字起こしを行い、さらにそれを生成AIアシスタントに渡して回答案を生成してもらう運用にまで進化した。「30分のクレームの場合、以前は折り返すまでに50分かかっていたが、10分にまで短縮できている」と玉城氏。

 当初の狙いであったコスト削減においても、月110万円の削減を達成。現場のメンバーからも、「電話の画面から、タブの切り替えでRevenue Acceleratorに移動できる」「コールスタッフでも会話の内容を振り返りやすい」といった声が上がっているという。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所