日本企業の業務の「ふんわり」を可視化し、自動化を成功させるには?
業務多すぎて「もう無理」にRPAの選択肢 成功の秘訣は業務フローの可視化だった
提供: ユーザックシステム
「AIエージェントによる業務自動化は、このままだと失敗したRPAプロジェクトと同じ轍を踏む」。こんな警鐘を鳴らすのは、業務フローの可視化ツール「Ranabase」を提供するユニリタと、デスクトップ型RPA「Autoジョブ名人」を手がけるユーザックシステムだ。データ活用やRPA導入に失敗し、DXが進まない背景について両社で語ってもらった。
職場の暗黙知がシステムにならない
AI全盛期の時代となり、DXブームもあいまって、業務の自動化は企業の大きなテーマとなっている。人手不足が深刻な飲食・小売の業界では、一足先にロボットやオーダー端末、無人店舗などが次々と実用化されているが、ホワイトカラーの業務にもこの自動化の波は訪れる。しかし、多くの日本企業でこの自動化のプロジェクトはうまく行かないことが見えている。自動化やデータ活用の前提となる業務の棚卸しが欠けているからだ。
たとえば、「Excelの業務を自動化したい」は現場から挙がってくる鉄板のリクエストだが、失敗する企業は多い。マクロや関数が動いていたり、操作の前に手動での操作が入り、現場でやっている業務がExcelの業務と一致しないため、自動化に失敗してしまうのだ。
また、部門をまたいで情報共有をし始めると、業務を理解していない他部門から想定外の書き込みやデータがどんどん入力されてしまう。整理されていないデータは、AIの処理でも手に余る。多くは業務フローとデータを把握していないから起こる不都合だ。また、現場部門でSaaSを導入してしまい、情報システム部が扱っているデータを把握できなくなることも多い。
「業務フローや扱っているデータを把握できない」。これは自動化のみならず、システム開発全体の課題でもある。日本企業の多くは業務を可視化せず、暗黙知として保有してしまっている。ユニリタでデータ活用の事業を担当する水原正氏は、「いざDXしましょう、システム化しましょうという話になっても、業務フローやデータの可視化が抜けている。暗黙知になっているところがシステムにならず、データ分析で必要なデータがなにかもわからず、うまく回らない。結局、業務にフィットしないシステムができあがってしまうんです」と指摘する。
実際、ユーザー企業と合意した条件でプロジェクトを始めたものの、あとからなぞの業務やデータがどんどん出てきて、仕様が変わり、プロジェクトが炎上してしまうという話は枚挙にいとまがない。「人のやっている作業がまったく可視化されていないがため、システム要件がどんどん変わってしまう。日本の炎上プロジェクトは大なり小なりこのパターンだと思います」と水原氏は指摘する。
業務フローが定義されておらず、部署内のシステムやデータはサイロ化し、会社からはブラックボックスに見えてしまう。こうした状態では、自動化のみならず、DXの成功もほど遠い。DXの前にまずは業務の棚卸しをしようというのが、今回取材したユニリタの提案だ。
データ活用の前にまずは業務フローの可視化 Ranabase登場の背景
1982年設立のユニリタは、データ活用やシステム管理の領域でソフトウェアを提供している。ジョブ管理ツールの「A-AUTO(エーオート)」やサービスマネジメントプラットフォームの「LMIS(エルミス)」などのミドルウェア・サービスに加え、コンサルティングやSI、アウトソーシングまで一気通貫で提供しているのが特徴。今回、紹介するBPM(Business Process Management)ツールの「Ranabase(ラーナベース)」は、データ活用の前段階で必要な業務の棚卸しを実現するフローチャートツールだ。
RanabaseによるBPMを推進するユニリタの冨樫 勝彦氏は、もともとパッケージソフトのコンサル歴が長いが、「導入前の業務整理や改善の方が楽しくなってしまった(笑)」とのこと。業務フローの可視化や分析を行なうBPM(Business Process Management)ツールの世界に足を突っ込み、Ranabaseを立ち上げたという経緯だ。
BPMツールが提供する業務フローの可視化や分析。多くの日本企業はこの業務フローの可視化をExcelで行なっているが、「これだと単なるお絵描きになってしまう」。これに対してBPMツールは、業務ごとのステップ、必要なデータ、システムなどをフロー図として記述することができ、リポジトリとしてデータベース化できる。業務量や実行時間のシミュレーションも可能で、業務の一部を変更すると、どこに影響が出るかもわかる。「業務フローを資産として管理したいときにほしくなるツールです」(冨樫氏)
データ活用の前提として非常に重要な業務フローを可視化し、分析できるBPMツール。その有用さや価値は誰でも理解できるが、冨樫氏が感じたのは、BPMツールの敷居の高さだった。そして「海外製品はとにかく値段が高い。さまざまな機能も盛り込まれているのですが、たぶん1/10くらいしか使えない。日本市場にはマッチしないと思いました」と語る。大企業が全社レベルで導入しないと投資対効果に合わないが、導入しても使いこなせる企業は少ない。「やっぱりお絵描きツールにとどまってしまうんです」と冨樫氏は指摘する。
業務を担当者レベルにまで深掘り 可視化により自動化に活かせる
こうした課題感から日本の中小企業でも導入できる機能と価格を前提に作られたBPMツールがRanabaseになる。「分析にまで進める成熟度を持っている日本企業はまだ少なくて、現状は業務フローを可視化したいというニーズがほとんど。だから、シミュレーションや基幹システムとの連携といった機能は入っていません。フローを記述し、テーブルで管理されたレポジトリにするという可視化の機能に特化しています」と冨樫氏は語る。
実際にRanabaseの画面を見せてもらった。フロー図は業務の解像度にあわせて複数のレベルに分かれており、レベル1では企業が持ちうる機能を総務、人事、営業、製造、マーケティング、広報などの部門単位で分類されている。人事部門をブレイクダウンすると、採用、育成、勤怠、給与などに分類され、それぞれに業務フローで登録できる。
たとえば給与計算の場合、締め日をトリガーにし、勤怠システムを確認する必要があるため、入力を促す業務が発生する。インプットである勤怠実績が全員登録されると、初めて給与計算に進む。会社の業務を俯瞰し、どんどん掘り下げて可視化できるのがRanabaseの大きなメリットだ。
こうした一連の流れは「パレット」として一覧表示でき、フィルターで絞り込める。必要な帳票や業務を洗い出したり、課題を付箋で登録することも可能だ。こうすれば、業務の無駄やパフォーマンス、システム化すべきところなどが見えてくる。「たとえば、異なる部署で同じ作業をしているのであれば、これはまさにシステム化すべきところですね」と水原氏は語る。
このRanabaseを導入するのは、いわゆる「DX推進部」が多いという。出自は情報システムや経営企画室などさまざまだが、DXを推進するにあたって、前述したデータ活用や業務の可視化でつまずいた組織がほとんどだという。「現場に近づけば近づくほど、ITにくわしい人が減っていきます。とはいえ、現場部門の全員にITスキルを持てというのは非現実的。だから、Ranabaseのように、もっとシンプルに、簡単に業務フローを可視化し、メンテナンスできることが重要なんです」と水原氏はアピールする。
業務の棚卸しがないRPAプロジェクトは失敗に
ユニリタのRanabaseを活用することで、ユーザー企業の業務自動化を推進するのが、デスクトップ型RPA「Autoジョブ名人」を手がけるユーザックシステムである。
ユーザックシステムは、基幹システムだけでは難しい業務のデジタル化や自動化を実現する「名人シリーズ」というパッケージを展開しており、1986年に帳票発行を効率化する「伝発名人」をリリースして以来、ユーザーの声を元にさまざまなパッケージを開発・販売してきた。また、2004年には今で言うRPAにあたる「Autoブラウザ名人(現Autoジョブ名人)」を発売し、以降20年以上に渡って業務自動化を追求してきた。
Autoジョブ名人が得意とするのは、受発注の自動化だ。ユーザックシステムの東條 康博氏は、「とある食品メーカーは、当日配達を行なうため、社員は朝7時に出社し、受注と出荷の作業をやっていました。この時間からじゃないと間に合わないからです。でも、売上が好調で、朝6時から出社しないと受注と出荷の作業をこなせなくなってしまった。これはさすがに無理ということで、Autoジョブ名人を導入していただきました」と語る。
また、多くの企業で共通の総務や人事業務も自動化の実績が豊富だ。たとえば、勤怠管理では、少ない人数で勤怠システムの登録状況を確認し、ときには社員に入力を促す業務が発生する。こうした業務もAutoジョブ名人を利用すれば、未登録の社員を抽出し、メールを送信するといった作業として自動化できる。
そんなユーザックシステムが、なぜユニリタのRanabaseと連携するのか。ここにはいわゆる2018年のRPAブームの最中で、人知れず失敗してきたプロジェクトが数多くあったからだという。ユーザックシステムの東條氏は、「業務の棚卸しを一切行なわずに、今の業務をそのままRPAにやらせようとして失敗している企業がいっぱいありました」と指摘する。
これに対して、RPAを提供するユーザックシステムとしては、ジョブの開発やカスタマーサクセスという形でサポートは提供してきたが、ベンダー側としての限界を感じていた。RPAを長く使ってもらうためにも、業務の棚卸しは提案してきたが、作業自体はやはりユーザー企業側のタスク。「業務棚卸しは、非常に手間のかかる作業。業務をすべて把握している担当者はいないので、現場の方にヒアリングして業務を可視化する必要があります」という課題感があった。これを可能にするツールが、ユニリタのRanabaseというわけだ。
こんなに相性のよいRPAとの連携 AIでも業務フローの可視化は必須
ユニリタとしても、業務改善にはAutoジョブ名人のようなツールが必要だった。「Ranabaseで業務の可視化は実現するのですが、可視化しただけでは業務はよくなりません。RPAなり、AIなりで自動化することが重要になります」と冨樫氏。Ranabaseで業務を可視化し、Autoジョブ名人で自動化する。まさにベストマッチのソリューションだ。
加えてRanabaseは業務ごとの頻度と所要時間を登録できるので、RPA導入の効果も明確にわかる。「業務の自動化率、属人化率、自動化による削減時間などを定量的に評価できます。これがいわゆるDXの成績表です。お客さまからもこうした定量的な評価がやりたいという声は多い。全社員に業務とかかる時間を入力してもらっている企業も増えてきています」と冨樫氏は語る。
ユニリタはユーザックシステムの連携で、どのような自動化の未来を描くのか。まずAutoジョブ名人の浸透にRanabaseを活用できるという。「RPAも最初は効果の出そうな業務の自動化にフォーカスするのですが、次が続かないということが多いと思っています。でも、業務フローをきちんと可視化していくと、RPAの適用箇所を見つけやすくなります。最初のRPAの成功体験を横展開しやすくなるはずです」と冨樫氏は語る。
また、前述したRanabaseで具体的な作業を洗い出していけば、RPAのジョブ作成も容易になる。「Ranabaseでは業務を担当者レベルまで深掘りできるので、RPAの設計図として作業フローを作れば、RPAをブラックボックス化しないようにできます」と冨樫氏は語る。ユーザックシステムとしても、業務フローの可視化こそがまさにRPAに足りていなかったところ。「RanabaseとAutoジョブ名人の活用で、1社でも多くの企業がDXに踏み出していければと思っています」(東條氏)。
実は最近話題のAIエージェントも、業務フローが可視化されていないという課題にぶち当たることが多い。「AIは与えられた情報を使って、杓子定規に動作するのですが、本来は業務フローをきちんと教え込ませなければなりません。日本企業のふんわりしたところをAIで実現するには、こうした業務フローの可視化が必要だと考えています」と水原氏は語る。
とかく業界的には「レガシーなRPA」「最新のAI」とくくられがちだが、自動化を実現する手段としては両者とも共通。また、業務フローの理解が深まることで、精度が高くなると言う点も同じだ。業務フローを可視化した上で、人手のマニュアル作業を確実にこなすRPAと、人間の指示に対して自律的に動作するAIが、今後は連携して自動化を進めて行く時代になるだろう。
RanabaseとAutoジョブ名人で価値のある自動化を
冒頭にも述べたとおり、日本の職場はどこも慢性的な人手不足。しかし、売上は伸ばさなければならないし、労働時間は削減しなければならない。この無理難題を解決するには、個々の社員のパフォーマンスを上げるしかない。そのためには業務フローの見直しと自動化が必須。その点、今回のRanabaseとAutoジョブ名人のタッグは、多くの日本企業にメリットをもたらしてくれるはずだ。
今回取材したユニリタとユーザックシステム共催のセミナーも開催される。「『うちのDXは、なんでうまくいかないんだろう』『SaaS入れればうまく行くと思っていたのに』と考えている方にぜひ聞いて欲しいです。特に製造業や流通業は日本の素晴らしい産業ですが、人手の業務が多く残っている業界なので、課題を感じている人はセミナーに参加してもらいたいです」と水原氏はアピール。
東條氏も、「もう業務が回らないと感じている方に来てもらいたいです。今回は業務フローの可視化という上流工程と、実際にどのように業務を自動化するかという下流工程まで全部カバーしますので、いろいろな立場の方がヒントを得られると思います」と語る。